情振法(IPA法)
「lPA法」(情報処理の促進に関する法律)
情報処理の振興を目的に,昭和45年5月,情振法(この当時「情報処理振興事業協会等に関すろ法律」)が制定された。同法制定の背景には,ハードウェアすなわちコンピュータそのものについては,従来より,電振法の運用等により必要な措置が講じられてきているが,ソフトウェアの面では所要の措置の確立が遅れているため,その強力な振興が必要との認識がある。
このような現状認識に鑑み,電子計算機の利用促進,ソフトウェアの開発・流通の促進,情報処理サービス業・ソフトウェア業等の育成を図っていくことを緊要な政策課題として,同法では・電子計算機利用高度化計画の策定,・プログラム調査簿の作成・公表,・情報処理技術者試験の実施,・情報処理振興事業協会の設立を規定している。同法は昭和60年,情報処理に関する新たな課題に対応するため一部改正を行い,題名も「情報処理の促進に関する法律」と改められた。

情促法
情報処理の促進に関する法律
1.法制定の経緯
本法の前身である「情報処理振興事業協会等に関する法律」(IPA法)は,昭和45年,情報化社会の実現に向けての所要の施策を推進するための基本的な法律として制定されたものである。
以来,IPA法により,・電子計算機利用高度化計画の策定,・プログラムの流通促進,・情報処理技術者試験の実施,・情報処理振興事業協会(IPA)事業の推進(汎用プログラム開発,債務保証等)等の情報処理に関する総合的な施策が講じられてきたところである。

本法は,その後の情報化の著しい進展に伴って顕在化してきた課題を克服し,健全な高度情報化社会の実現に向けて新時代の情報化のフレームを構築するため,IPA法の一部改正法として策定されたものであり,第102回通常国会で成立,昭和60年5月1日公布されたものである。

さらに昭和61年には,情報処理振興事業協会(IPA)が従来,一般会計の補助を受けて行っていた「高度プログラム安定供給事業」の一層の充実を図ろため,産業投資特別会計からの出資を受けて同事業を行うこととなったため,これに対応した法改正を行っており,61年5月10日公布している。

2.昭和60年法改正について
(1)法改正の背景
「情報処理振興事業協会等に関する法律」が制定された昭和45年以来,わが国の情報化は広汎かつ急速な進展をみせ,電子計算機の実働台数は15万台を超えるとともに,わが国情報産業は10兆円産業といわれるまでに成長してきており,なおその増勢には著しいものがある。しかしながら,このような情報化の進展に伴い,今日のわが国の経済社会は,従来とは異なった新たな課題に直面している。第一に,ソフトウェアの需給ギャップの一層の深刻化である。技術革新を背景としてハードウェア・コストの著しい低減が図られる一方で,ソフトウェア需要の急激な増大(年率約26%増)と情報処理技術者の不足とから生ずる良質で安価なソフトウェアの不足は今後の情報化の進展の上で最大のボトルネックとなろ恐れがある。
このため,依然として労働集約的に行われているソフトウェア開発の工程を自動化・機械化し,その生産性を大幅に向上させるとともに,情報処理技術者の育成が急務となっている。

第二は,産業分野における電子計算機の高度かつ多様な利用形態の展開に伴う課題である。電子計算機は従来の単体としての利用から,企業内そして企業間へと相互にシステム化された連携・共同利用へと進みつつあり,従来からの業種の枠を超えた情報化の進展,新たな事業へのダイナミックな展開が予想されていろ。しかし,現状のまま,システム間の相互運用性が考慮されることなしに,閉じたシステムが拡大する形で進展した場合,結果として取引先企業ごとに端末機の設置を余儀なくされたり,ソフトウェアの重複開発等の非効率な事態を生じかねず,事業者間の連携によって,開かれた情報化を促進していくことが緊急の課題となっている。

無論,この他にも第五世代コンピュータの研究開発等わが国の創造的自主技術の確立,高度情報化社会にふさわしい諸法制の整備や新たなルールづくりなど情報化をめぐる重要課題は少なくない。しかしながら,先述の課題については,その対応を怠ると情報化が無秩序に進展し,将来における解決がきわめて困難になるとの観点からこれらの課題の解決に向けて総合的施策を推進するための法的枠組みが必要不可欠と考えられるものであり,このような認識に基づき,昭和60年,法律の一部改正を行ったものである。

(2)法改正の概要
・題名およぴ目的規定の改正
今回の法改正においては,電子計算機の連携利用に関する指針の規定(第3条の2)を追加することとしているが,これは,電子計算機利用高度化計画と相まって,今後の情潤E揩フ促進を図る上での国としての指針となるべきものである。また本法制定後15年間における情報化の進展に伴い,情報処理技術者試験等が情報化社会において果たしている役割の高まりを考慮すると,現行法の題名(「情報処理振興事業協会等に関する法律」)がこれらの内容を具現化しているとはいえないため,法改正の趣旨を踏まえ,題名を「情報処理の促進に関する法律」に改めるとともに,法律の目的において,「電子計算機の利用の促進」とあるのを「電子計算機の高度利用の促進」に改めている。

・電子計算機の連携利用に関する指針(第3条の2)
産業分野において,事業者が広く連携して,帳票・商品コード等ビジネスプロトコルの統一や共同データベースの構築のように電子計算機の効率的利用を図ることが必要かつ適切であると認められるときは,主務大臣(当該事業を主管する大臣)は,電子計算機の利用の態様,実施の方法およぴ配慮すべき事項に関し,指針を定め,提示することとしている。これによって,相互運用性(インターオペラビリティ)の確保された業界内情報システムや業界共同データベースの構築に際し,業界内のコンセンサス形成の促進を図ろうとするものである。

なお,指針の策定に当たっては,関連中小企業者の利益に配慮するとともに(同条第2項),関係する業界等の意向を参酌するため,あらかじめ,関係審議会等の意見を聴くもの(同条第3項)としている。

・情報処理振興事業協会(IPA)の業務の拡大
IPAは,本法に基づき,昭和45年10月,わが国情報処理の振興を図るため,プログラムの開発,利用の促進,情報処理サービス業等に対すろ助成を行うことを目的どして創設された特別認可法人であるが,58年度までに190本の先進的・汎用的なプログラムの委託開発を行ったほか,ソフトウェア保守技術開発や情報処理サービス業,データベース業等に対する債務保証事業を行ってきている。


今回の法改正において,情報処理振興事業協会の業務として追加したものは次のとおりである。
(i)プログラム作成効率化業務(第28条第l項第4号〜第6号)
ソフトウェア作成の工程に電子計算機を大幅に導入し,機械化・自動化を進めろことにより,わが国のソフトウェアに係る生産性・信頼性を飛躍的に向上させることを目的として,IPAにソフトウェア生産工業化システムを構築すろこととしている。このため新たに,IPAの業務として,ソフトウェアの作成を支援するためのプログラムを開発または取得し,また,ソフトウェア・エンジニアリング情報等を収集し,これらの情報を対価を得て提供する業務を追加したものである。

(ii)債務保証対象の拡大(第28条第1項第8号)
従来IPAでは,情報処理サービス業等については,プログラム開発資金,教育研修資金の借入れに対する債務保証を行ってきているが,今回,情報処理サービス業以外の者に対する債務保証の対象に,従来のプログラム開発に係る直接経費に加えて,プログラム開発に係る技術者の技術向上に必要な経費を新たに追加することとした。

(iii)貸付業務(第28条第l項第9号)
現在,産業分野における情報化は,FA,OAなど企業内情報システムの構築が中心であり,本格的な企業間情報システムはその必要性が指摘されながら,技術的,資金的困難も多く,その構築に遅れがみられている。このため,今回,情報処理に関し,技術的知見を有するIPAに貸付業務を追加し,産業分野における複数企業間共同で行う情報システム構築等に係るプログラム開発に必要な資金について貸付けを行うこととした。

なお,以上のIPAの業務の追加に伴い,特別勘定の創設,長期借入金に関する規定等所要の規定を整備している。

(3)施行期日等
以上が,今回の法改正案の概要であるが,当初案に盛り込まれていた電子計算機安全対策に関すろ規定については,各省庁での調整の結果,犯罪防止などを含むより広い見地から検討すべきとの意見も出され,今回の法改正ではとりあえず切り離すこととされたが,安全対策の重要性に鑑み,引き続き政府部内で検討すろこととなっている。

法律の施行は,IPAの事務関連部分については,公布日(昭和60年5月l日)をもって施行期日とされたが,連携利用指針等の業務追加以外の部分は,指針等の策定にあたって関係審議会等への付議,関係各省庁との協議等に長期間を要することから,昭和61年4月1日とした。

3.昭和61年法改正について
(1)法改正の背景
情報化が急速に進展する状況下において,従来にも増してソフトウェアの果たす役割がますます重要となっているが,ソフトウェアの質量両面にわたろ需給ギャップは深刻の度を増している。

これを解消するため,昭和60年度からソフトウェア生産工業化計画(いわゆるΣプロジェクト)が5年計画でスタートしたが,なおもう一方の柱である汎用プログラム開発・普及についても一層の充実を図る必要がある。

かかる要請に応えるため,従来IPAが主たる業務として行ってきた,「高度プログラム安定供給事業」について,開発されたプログラムがIPAに資産として蓄積され,かつ,民間分野において積極的に普及を図ることにより中長期的には十分な事業性が期待されることから,産業投資特別会計からの出資を受けて実施することとし,このための関係規定の整備を行うものである。

(2)改正の概要
昭和61年度から産業投資特別会計からの出資を受けて高度プログラム安定供給事業を実施するに当たり,同事業を含むIPAの特定プログラム開発等の業務について出資を受けることができることとし,これに伴い,資本金,利益およぴ損失の処理,出資者原簿,解散の場合の残余財産の分配に関する規定等に所要の改正を行うものである。